公と私 尾崎大輔

ばんぶんぼん!は作家の小原晩、星野文月とBREWBOOKS尾崎大輔の3人によるリレー連載です。3人で話してみたいテーマを持ち寄って、自分の思うこと、ふたりに聞いてみたいことなどを書いていきます。連載のタイトルは3人の名前や愛称をくっつけました。


文・写真・題字:小原晩/星野文月/尾崎大輔
キービジュアル:モノ・ホーミー

晩ちゃん文ちゃんこんにちは。
僕は「公と私」(こうとし)というテーマを設けてみました。字面が固いですねえ。手元のメモに「公と私 尾崎」と書いてあって、中学の作文コンクールみたいだなと思いました。

どういう考えでこのテーマを選んだのか、まずは説明が必要ですね。「公と私」というキーワードは少し前から僕の頭の中にあって、今年のマイテーマみたいな感じになっています。パブリックとプライベート。オフィシャルとアンオフィシャル。振り返えるとBREWBOOKSはこれまで「私」であり続けていたなと思います。いろんなことをやってきたかもしれないけど、それは主に「私」の領域であったなあと思うのです。たとえば5年前、まだ本棚がすっからかんの状態でBREWBOOKSはオープンしました。その時はきちんと準備するよりはとっとと始めることが大事だと思っていたんです。なので「本屋」の定義をグーッと広げて、オープンの敷居を下げたんですね。これは「私」的なやり方だと思います。いま本屋って言ったけど、僕はBREWBOOKSのことを「本屋」と呼ばずに「お店」と呼ぶことが多いです。これも小さな私。月に一度開催している短歌部は歌会でなく短歌部と呼んでいます。カジュアルに短歌を詠む会だよ、伝統的な歌会じゃないよっていうことが伝わるようにするためです。少し遊びっぽくすることで敷居を下げているんですね。こういったことはBREWBOOKSにまつわる大小さまざまな物事に見出すことができます。もちろんそれが一概に駄目ってわけではなくて、良い側面はいっぱいあるけど、それだけではこの先行き詰まるなあ、と思うようになりました。そろそろBREWBOOKSなりに「公」の領域を持ちたい。具体的に何っていうのがまだ分からないんですけど。

そんなわけで何かを見聞きすると最近は「ああ、これは公だ」「これは私だ」とか気づくモードになっています。例えば『代わりに読む人1創刊号』を開くと「公園」という言葉が出てきて、おっとなりました。『代わりに読む人』という文芸雑誌は「公園」を目指します、と友田とんさんは仰っているんですね。公園は公共施設だけど、いろんな人がいろんなことをして過ごせる。公と私の中間にあるような気がします。公私の狭間としての文芸雑誌。あと、先日「のんが肩書を変えます」っていう話題が流れてきました。ゆるめの肩書からカチッとした肩書に改定して、それを新聞広告で発表したっていう話なんですけど、これはまさに私から公へ切り替えだなと。肩書なんて勝手に変えればいいはずなんだけど、新聞で発表することで「これからは公でやっていきます」という覚悟を示すことができる。普段の僕なら「このニュースめちゃくちゃどうでもいいな」という感想しか持たいないと思うんだけど、この時はすごくのんに共感しました。

僕は店にとっての公私を考えるけど、晩ちゃんと文ちゃんは作家としての公私があると思うんだよね。それを聞いてみたいなと。

以前晩ちゃんが店に来てくれた時、『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』がすごく売れていることを僕が「めっちゃ人気のインディーズバンドみたいですね」と言ったら、晩ちゃんが「メジャーデビューしたいです!」と(若干強めに)応えたこと、なぜかちょくちょく思い出します。なんか良かったです。


尾崎大輔 / Daisuke Ozaki

1982年生まれ。2018年にBREWBOOKSをオープン。

だいたい2時半くらいに寝ます。