短歌 尾崎大輔

ばんぶんぼん!は作家の小原晩、星野文月とBREWBOOKS尾崎大輔の3人によるリレー連載です。3人で話してみたいテーマを持ち寄って、自分の思うこと、ふたりに聞いてみたいことなどを書いていきます。連載のタイトルは3人の名前や愛称をくっつけました。


文・写真・題字:小原晩/星野文月/尾崎大輔
キービジュアル:モノ・ホーミー

居酒屋でホッケの開きを頼むのが好きです。でっかいのが出てくるとテンションが上がります。おふたりはホッケ、好きですか?
ホッケが出てくるとまず背骨を剥がし、キープします。表面の皮やひっついてきたわずかな身を食べます。「ここが一番旨いんだよ」とか言いながら。僕が背骨とちまちま格闘しているうちに他の人はどんどん身を食べます。気がつくと身離れの悪い部分だけ残っていて、背骨をやっつけた僕は次にそういうところを食べることになります。ほんとうは真ん中辺りの身をがばっと取って食べたいんだけど、いや好きにしろよって話なんだけど、背骨周りの可食部を食べる人は経験上あまりいないからほとんど無意識に引き受けてしまうんですよね。そういう哀しい性(さが)にふと気づいた時、このことを短歌にできないかなと思います。ホッケ短歌…。

あとは嫌なことがあったりした時についSNSでつぶやきたくなるけど、それを目にした人も嫌な気持ちになるだけだよな〜と思い直してやめることがあります。そういうのを取っておくと、のちのち短歌のタネになったりします。SNSで言えないこと、短歌では言える。

うちの店では月に一度ニシオギ短歌部というイベントが開かれていて、僕は主にその時間の中で短歌を作っています。他の時間に作ることはほとんどないのでいつも一ヶ月のブランクがあります。なので「あれ、いつもどうやって作ってるっけ…」という地点から毎回やり直しています。短歌部は毎度お題があって、そのお題に関する様々な短歌を部長がプリントにまとめてきてくれます。始めにそのプリントを読んで、皆で感想を述べ合います。そうすることで徐々に頭を短歌脳にしていってから、一首か二首作ります(もっとたくさん作る参加者もいます)。
その後は良いと思った短歌の感想を皆で述べ合うんですが、その時間がとても貴重な気がしています。人の感じ方というのは本当に多種多様で、自分が思ってもみなかった解釈や感想をもらうことができます。それで見方が変わったり、よりよい言葉が見つかったりします。自分自身は全然そういうことは考えていなかったけど、思わず「それ採用!」と言いたくなる解釈をもらうこともあります。なので作ったら半分完成、人の目に触れて反応を返してもらうことでもう半分完成という気がします。

短歌部の前は俳句部というのを開いていたんですが、「短歌より俳句のほうが向いてると思うよ」と言われたことがあります。僕自身もそう思ってるふしがあります。僕としては俳句も短歌ももっと気軽に楽しむ人が増えれば良いな〜と思ってやっています。それで句集や歌集を買う人が増えたら嬉しいかな。本を売る店だから。だから向き不向きは気にしていません。あと短歌が好きな人は俳句よりも詩に親しみのある人が多い印象がありますね。なぜだろう?俳句が好きな人もいますが、あまり話題にならないです。

ところで寒いのはつらいよね…!僕も文ちゃんと同じく雪が積もる地で育ちました。そこに比べれば東京は暖かいけども、よくわからない強風がびゅんびゅん吹くから体感的にはけっこう寒いです。それに屋内も寒い。家では薄着でいたいから二重窓が全国に普及してほしいです。
冬の良いところは、虫が出ないところです。

尾崎大輔 / Daisuke Ozaki

1982年生まれ。2018年にBREWBOOKSをオープン。

だいたい2時半くらいに寝ます。