なかよくなるまでの段取り 小原晩

ばんぶんぼん!は作家の小原晩、星野文月とBREWBOOKS尾崎大輔の3人によるリレー連載です。3人で話してみたいテーマを持ち寄って、自分の思うこと、ふたりに聞いてみたいことなどを書いていきます。連載のタイトルは3人の名前や愛称をくっつけました。


文・写真・題字:小原晩/星野文月/尾崎大輔
キービジュアル:モノ・ホーミー

 ひととなかよくなりたい。もっとしゃべりかけてほしい、しゃべりたい、もっとご飯やお茶やお酒の場にさそってほしい、さそいたい。あなたの普段考えていることを知りたい。そういうふうには、つねづね、思っているのだけれど、誰かとなかよくなりたいと思うとき、いつもどうしたらいいのかわからなくなってしまう。コミュニケーション新人、コミュ新になってしまう。
 わたしのなかよくなる方法はだいたい三つくらいあって、 

①とにかくたくさんの時間を過ごすこと。
②相手のほうが信じられないほどやさしくしてくれたことに驚いた勢いでもって心をひらききる
③どろどろになるまで一緒に酔う。 

 このうちのどれかである。
①とにかく時間をたっぷり、いやというほど過ごすことで、少しずつ合ってくる相手というのがときどきはいて、別に好きじゃないんだけど、とか思いながら、いつの間にかなかよくなることはある。
②自分の期待以上にやさしく接してもらうと(人間関係に対してそもそも期待なんてしなければいいのだけれど、深層心理でやさしくされること、想われることを期待してしまっているのだと思う)おどろいて、どうしてそんなことをしてくれるの、なんで、どうして、ぎぎ…ぎぎぎぎぎ…という感じで心のとびらがひらいて、それからはいろんなことを話せるようになる。
③どろどろになるまで一緒に酔うというのは、動物でいう腹を見せ合う感じに似ている気がする。二日酔いと後悔が強烈な副作用となってきいてくるのがたまに傷。すごく傷。
 こうしてまとめてみると、自分が心をひらくかどうか、というところに肝があるような気がする。相手を怒らせないとか、嫌われないとか、そういうことではなくて、自分の心をひらくことがまず第一歩。
 けれど、上記の三つ以外にわたしは心のひらき方を知らない。このままでは、いそがしくて、ちょっとつめたくて、下戸のひととは一生なかよくなることができない。それはいやだ。ということでふたりは、どうやってひととなかよくなっているのか(心をひらいているか)教えてほしい。 

小原晩 / Ban Obara

2022年初のエッセイ集となる『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を自費出版。2023年「小説すばる」に読切小説「発光しましょう」を発表し、話題になる。 9月に初の商業出版作品として『これが生活なのかしらん』を大和書房から刊行。