心が死にかけのとき 小原晩

ばんぶんぼん!は作家の小原晩、星野文月とBREWBOOKS尾崎大輔の3人によるリレー連載です。3人で話してみたいテーマを持ち寄って、自分の思うこと、ふたりに聞いてみたいことなどを書いていきます。連載のタイトルは3人の名前や愛称をくっつけました。


文・写真・題字:小原晩/星野文月/尾崎大輔
キービジュアル:モノ・ホーミー

まずはからだの調子に耳をかたむける、心ではなく。
眠ければ寝る、腹が減っていれば食べる、冷えているなら湯船に浸かる。
それらが済んだら、今日は休みにするのか、しないのかを決める。
休みにするなら、心をころすものから、心を遠ざける。
映画やドラマを見るもよし、漫画を大人買いして読み耽るもよし。とにかく考えることから遠のく。また、どうしても考えたいという場合であれば、違う角度から考えるための知識や知恵を得られるであろう資料を読むもよしである。
もし休めないのであれば、自分にとっての普通をまず求めない。
締め切りを過ぎているのならば、謝りのメールを送る。相手に迷惑をかけたのならば、謝りのメールを送る。無理なものは無理だと今日は諦め、反省する。それから、部屋を出て、近くの図書館などへ行く。手当たり次第に本を読み、音楽を聞き、なにか思いつくものがあれば、さらさらと書く。つまらなくてよし。

私にとって、いちばんいけないのは人に当たること、または、頼り過ぎることである。どちらも翌日にはとんでもない後悔をする。自己完結には成長がないという意見もあるかもしれないが、傷を舐めてもらったって別に成長はないのだから同じ話である。えらい人のありがたいお話だってちゃんと聞きやしないのに、弱れば他人に寄りかかりすぎる自分は卑しい。未来の自分には、どうか控えてほしいと思う。

別になにをしたって救われない時は救われない。誰も助けてくれはしない。みんなにひとつの人生があるのだから、私の穴をうめるほど構ってもらうことはできない。他人は私を救うために存在していない。他人は他人の人生を生きている。私も私の人生を生きている。どれほど近くとも、もういなくとも、完璧な救いはあり得ない。けれど、いつの日かふと癒える。自分勝手にふと癒える。誰のおかげかもわからないようにして当たり前のように癒える。そう信じる。

小原晩 / Ban Obara

2022年初のエッセイ集となる『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を自費出版。2023年「小説すばる」に読切小説「発光しましょう」を発表し、話題になる。 9月に初の商業出版作品として『これが生活なのかしらん』を大和書房から刊行。